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【徹底解説】映像制作における“シネレンズ”という選択肢

 レオナルド・ダ・ヴィンチ
[ シンプルさは究極の洗練である レオナルド・ダ・ヴィンチ ]

シネレンズとは?

シネレンズ(シネマレンズ)は、映画やドラマなど映像作品の撮影を目的に設計された、プロフェッショナル向けのレンズです。一般的な写真用レンズと異なり、ピント・絞り・色再現性・ギア構造など、撮影中の一貫性と操作性を重視した設計がなされています。滑らかなフォーカス操作、精確な距離指標、マニュアル制御による繊細な演出など、映像表現の幅を広げるための道具として重要な役割を果たします。

株式会社K.OFFICEでは、より良い品質の撮影を行うために、Carl Zeiss社のシネレンズ「Nano Prime(ナノプライム)」を導入しています。

シネレンズとスチルレンズを実際に比べてみて、見えてくる事


では、単刀直入にシネレンズと一般的に使われるスチルレンズにはどのような違いがあるのでしょうか。実際に再潰えした素材を見比べていきたいと思います。

今回の比較対象として、K.OFFICEで継続して愛用しているSONYのスチルレンズ、「G Master(GMレンズ)」を使用していきます。

絞りを浅くして比較

まずは今回使用するGMレンズ(24-70mm f2.8 GM2)でF値を一番開放にした2.8での比較を見てみましょう。
NanoPrime T値:2.8 / GM F値: 2.8
※シネレンズでは一般的に絞り値として使われているF値ではなく、より正確な単位としてT値が用いられています。
 厳密にはF2.8=T2.8ではないのですが、今回は同じ2.8で比較しております。

ツァイス ナノプライム|ZEISS Nano Prime

ボケ感が違うのが見て取れると思います。
では、どっちの方が綺麗だと思いますか?

正直、GMの方が綺麗に見えた方もいると思います。
大丈夫です。その感覚は間違っていません。G Masterとは、美しいボケ感のために設計されたハイエンドレンズです。あなたが綺麗だと感じるのが、この製品の価値を裏付けるのです。
勿論、NanoPrimeの方が綺麗だと感じた方も間違いでないです。どちらも素晴らしい技術力の賜物です

もう少し見比べてみましょう。

絞りを深くして比較

NanoPrime T値:4.0 / GM F値: 4.0
次はF値2.8から少し絞ってF4.0(T4.0)で比較してみましょう。

ツァイス ナノプライム|ZEISS Nano Prime

奥の方をよく見ればボケ感の違いは分かるのですが、注視しなければ分からない程度の差しかないように見えませんか?

そうです。差は所詮その程度で、それも個人の好みに左右される範囲です。

「おいおい待ってくれよ、シネレンズの良さを知りに来たのに、これじゃプロパガンダかよ」

そんな声も聞こえてきそうですが、心配いりません。
「それぞれに良さがあっていい」という述べてもいないような結論を述べるわけでもありません。

こればでの話は、単なる“綺麗さ”の話

ここで私たちが注目しているのは、「綺麗さ」の先にある“どのように映像を作るか”という設計思想にあります。

シネレンズのその設計思想


映像表現に集中できる操作設計

1. マニュアルフォーカス

シネレンズはAFを搭載せず、完全マニュアルフォーカス設計です。

AF(オートフォーカス)は非常に便利な機能であり、多くの現場で活躍しています。しかしその一方で、フォーカスがシステム側の判断によって切り替わることで、意図しない瞬間にピントが動いてしまうことがあったり、意図した動きにならないこともあるでしょう。

特に「誰の感情に視点を合わせるか」「何を強調して語るか」といった演出では、ピント移動の速度・タイミング・軌道すら映像そのものの一部です。

完全マニュアルフォーカスであることで、フォーカス操作のスピード・タイミング・繊細さを自ら設計でき、撮影者の意図やニュアンスをそのまま映像に投影することが可能です。
これは便利さとのトレードオフではなく、意図を乗せられる自由の獲得です。

2. フォーカス操作性と現場での一貫性

シネレンズは基本的に、すべての焦点距離でサイズ・ギア位置・重量が統一されており、リグやジンバルでの撮影においても再調整の必要がなく、撮影フローの一貫性が生まれます

また、フォーカスリングの回転角やトルク感も計算されており、人の手で追うフォーカスの操作感そのものが“心地よい”のです。これは撮影者のリズムを狂わせない、非常に重要なポイントです。

3. ブリージングの抑制

「ブリージング」とは、フォーカスを操作する際に画角がわずかに変化してしまう光学的な現象のことです。


シネレンズはそのノイズを抑える為ブリージングが極めて少なく、フォーカス送りそのものが“表現”として成立します。被写体に寄る・離れるという運動が、画面全体を乱すことなく成立するため、作品全体の世界観にノイズを生みません。

しかし、最近のスチルレンズにはブリージングを抑えるような機能が搭載されており、G Masterもその一つです。
そこで、ここでもシネレンズのブリージングとスチルレンズのブリージングを比べてみます。

ツァイス ナノプライム|ZEISS Nano Prime

比較動画をご覧いただければ、その差は一目瞭然です

表現のニュートラルさと描写の自由


1. 中立的な描写で“語りすぎない”

例えばGMレンズのようなズームやボケ感の演出を前提に設計されたレンズは、映像そのものに大小たりとも一定のトーンを与えます。それはとても魅力的である一方、裏を返せば「制限」であるとも言えるのです。

対してシネレンズは、中立的かつニュートラルな描写が特長。レンズが主張しすぎず、映像制作者の意図をまっすぐに映像へ落とし込めます。これは先ほど説明したマニュアルフォーカスの話もこの自由の一つです。
いわば、“引き算の美学”を体現するレンズ設計なのです。

2. 統一された色味と表現力

シネレンズは全焦点域で取れる映像の色味が統一されています。これにより、複数カットのつなぎ目でも映像が破綻せず、ブランドや世界観を映像全体で一貫させることが可能です。
さらに、NanoPrimeのような製品はさらにT1.5という明るい開放値を持ち合わせており、夜景や室内など光量の少ない環境でも、画質を損なわず“印象的な場面”を演出できます。
シネレンズの光学設計とガラス品質は、情報を伝えるだけではなく、“印象を残すための土台”として映像を支えてくれます。

シネレンズによって可能になる表現とは?


シネレンズの特徴が最大限に活きるのは、「映像に意味や温度を込めたい」場面です。たとえば:

  • 商品の細部からメインへとフォーカスが移動することで“価値”を演出する
  • 会話中の人物の手元から表情へと滑らかに視点が動くことで“心情”を語る
  • 統一されたトーンでブランドの“世界観”を崩さず届ける

伝えたいニュアンスをそのまま映像に

一つひとつのフォーカスが“語り”になり、マニュアル操作の自由度が「こだわり」を隅々まで反映させます。PVやCMなど、限られた尺の中でも印象を残す映像には欠かせない設計思想です。

シネレンズは「とりあえず美味しい高級食材」ではなく、「最高の造りの包丁」とでも言っておきましょうか。

機能が主役ではなく、“使い方”がすべてなのです。

K.OFFICEがシネレンズを使って実現する、他社との違い


私たちK.OFFICEは、映像を「情報の記録」ではなく「世界観の表現」として捉えています。NanoPrimeの導入によって、以下のような価値をクライアントに提供できています。

  • 独自のルックを持ったビジュアル提案
  • ストーリー性や温度感を視覚的に届ける
  • ブランドイメージと映像トーンの一貫性を担保する

これは単にレンズの性能だけでなく、それをどう使い、どんな思想で“絵作り”をするかというディレクションまで含めた強みです。

映像に“意図”と“温度”を加えたいあなたへ


Zeiss NanoPrimeを活かした映像制作で、伝わるだけでなく“記憶に残る”作品を一緒に生み出しませんか?

プロモーション、ブランディング、ドキュメンタリー、CMなど――
K.OFFICEは、一つひとつの映像に物語を宿すお手伝いをします。

「企業ブランディングに動画を活かしたい」「質感にこだわった映像作品を残したい」と考えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

シネレンズの他に動画撮影に特化したシネマカメラについて過去に解説している記事もありますので、そちらもよかったらご覧ください。

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