こんにちは。株式会社K.OFFICEの奥休場です。
ユーザーの購入前〜購入後までのプロセスを可視化する「カスタマージャーニーマップ」は、成果の出るマーケティング施策として注目を集めています。
しかし、「言葉は聞いたことあるけど理解が浅い」「成果が期待できる正しい作り方が分からない」など、マーケティング担当者でも知識が不足している企業も多いのではないでしょうか。
これまでたくさんの施策やコンテンツの提供はしてきたものの、イマイチ成果が出ていないのであれば「ユーザーへ刺さる内容になっていない」可能性が高いため根本的な部分から改善が必要です。
正しいカスタマージャーニーマップを社内全体で作成・共有できれば、新な活路を見出す一つの指標になります。
そこで今回は、カスタマージャーニーマップの基礎だけでなく、具体的な作成方法を5つのステップで解説していきます。
イメージしやすいように、カスタマージャーニーマップを活用しCVが199%向上した事例と成功のポイントも紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップとは、対象の商品やサービスにおいてターゲットが認知、購入や登録、購入後といったユーザー体験のプロセスを可視化しまとめたものです。
ターゲットの動きや心理を可視化することで、各タイミングで適切なアプローチを検討・実行が可能になります。
つまり、サービスや商品の提供側がユーザーの心を動かし、望み通りのアクションへ誘導するためのマーケティング手法の一つです。
物やサービスが溢れている現代において、もはやカスタマージャーニーマップの作成は必須ともいえます。
1-1.カスタマージャーニーマップがもたらすメリット
カスタマージャーニーマップを作成することで得られるメリットは、大きく分けて3つです。
- ターゲットとするユーザーの購入前〜購入後における全ての情報(行動や心理、課題など)を客観視できる
- 組織全体で商品やサービスの現状を共有できる
- 解決すべき課題が明確になる
カスタマージャーニーマップは、商品やサービスを通したユーザー体験(以降、UX)の全てを可視化し、開発担当だけでなくマーケティングや営業など組織全体に共有しやすい指標となります。
1-2.なぜマーケティング担当者はこれを知るべきか
商品やサービスが次から次へと溢れる現代では、単に品質の良さだけで勝負しても勝ち目を作るのが難しい現状があります。
よって、どれだけ購入前〜購入後のUXを高めることができるか、適切なアプローチが提供できるかが重要です。
そのため、商品やサービスが売れる仕組みを作るマーケティング担当者はカスタマージャーニーマップの理解は必須といえます。
また、マップの作成から各所へ共有、施策の立案までカスタマージャーニーマップをベースにした動きもマーケティング担当者には必要でしょう。
2.カスタマージャーニーマップの基本要素
では、ここからカスタマージャーニーマップの基本要素を解説していきます。
カタカナの横文字で憂鬱になる方もいますが、ポイントを抑えればさほど難しいことはありません。
2-1.カスタマージャーニーマップの要素
カスタマージャーニーマップは縦軸と横軸で構成されます。
横軸には、顧客が商品やサービスを知ってから購入・購入後のプロセス(フェーズ)を記載する形です。
縦軸には、顧客の状態を理解するために必要な指標を選んで入れていきます。
ちなみに、縦軸には以下の要素を入れて構成することが多く、各タッチポイントの施策も見やすい形になりますので、参考にしてください。
- 目的・ゴール
- マップの主人公となるペルソナ設定
- ユーザーの行動プロセス(シナリオ)
- 顧客の心理・思考・感情の状態
- 洞察・課題
要素の内容は、企業毎の商品やサービスによって変わります。
具体的な部分は、次項「企業向けカスタマージャーニーマップの作成ステップ」にて図表と共に分かりやすく解説していきます。
2-2.タッチポイントとは?
タッチポイントとは顧客接点を指し、商品やサービスを提供する企業とその顧客が接するそれぞれの機会のことです。
例えば、CMやWeb上などの広告、SNSの口コミ、展示会、営業など商品やサービスに触れ合う機会がタッチポイントに該当します。
商品やサービス購入後のアフターサービスなども一種のタッチポイントです。
タッチポイントは、ユーザーに商品を知ってもらう機会やコミュニケーションを取る場になり、定めたターゲットに対してどんなタッチポイントが有効かつアプローチが必要なのかをカスタマージャーニーマップで探っていきます。
ちなみに、タッチポイントと似た言葉で「チャネル」と呼ばれる言葉があります。
定義としては「顧客の接点」になるため同義語になりますが、チャネルは顧客との接点に用いられる手段や物を指す言葉です。
タッチポイントはチャネルを含んだユーザーの行動や心理など、商品やサービスの考え方に影響を与える過程も含む言葉になります。
混同されがちですが、違いを理解しておきましょう。
3.【企業向け】カスタマージャーニーマップ作成の5ステップ
ではここから実践に向けて、カスタマージャーニーマップの作成について解説していきます。
決まりのフォーマットはありませんが、下記のステップに沿って作成すれば、必要な要素を網羅し、マップ自体も作りやすくなるでしょう。
- ステップ1:ペルソナの設定
- ステップ2:ユーザーの行動や思考(縦軸)とフェーズ(横軸)の設定
- ステップ3:顧客の行動や感情の整理とマッピング
- ステップ4:タッチポイントの設定
- ステップ5:アクションと戦略の設定
カスタマージャーニーマップの例を先に載せておきます。
3-1.ステップ1:ペルソナの設定
まずはペルソナの設定が必要不可欠です。
そもそもペルソナとは、商品やサービスの顧客(見込み客含む)の特徴を設定した仮装人物のことを指します。
単に年齢や性別といった簡単な項目だけでなく、より細かい設定がなければ「ユーザーに刺さる施策」は見出せません。
具体的には、
- 名前・性別・年齢・居住地
- 家族構成
- 勤務先・職業・勤務地
- 年収
- 学歴
- 趣味・趣向
- 性格
- 生活行動パターン
- 悩み・抱えている問題(エピソード含む)
など、ユーザーを取り巻く環境まで設定するようにしてください。
既にリリースしている商品やサービスであれば、既にいる顧客の分析や広告・宣伝を通した見込み顧客の分析をしてペルソナを設定します。
新規であれば、競合商品の顧客を分析していくと具体的なペルソナが見えてくるはずです。
3-2.ステップ2:ユーザーの行動や思考(縦軸)とフェーズ(横軸)の設定
ここから実際のマップを作成していきます。
縦軸の項目に決まった様式はなく、商品やサービスによって変わる形です。
ただ一般的には、以下の項目で構成するケースが多いといえます。
- ペルソナ:間違った方向性に進まないようにマップに記載しておく
- フェーズ:ペルソナの行動を各フェーズ毎に分ける
- 行動:各フェーズでユーザーが取る行動
- タッチポイント:顧客と接触する場所・ツール・機会
- 思考・感情:各行動・タッチポイントで感じる顧客の感情
- 課題・問題点:各段階で生じている顧客の課題や問題点
自社の目的やゴール、環境によって項目はアレンジしても問題ありません。
次に横軸は、ユーザーが購入前〜購入後までの各フェーズを設定します。
こちらも決まった項目はないものの、以下の構成が一般的です。
- 興味・認知:ユーザーが商品に対して認知・興味を持った状態
- 情報取集・比較:ユーザーが商品の情報収集や他社と比較した状態
- 体験・購入:ユーザーが商品を体験・購入した状態
- 評価(購入後):ユーザーが体験・購入した後の状態
横軸もペルソナやサービスによって、フェーズ内容は異なるため、自社の内容によって作成してください。
3-3.ステップ3:顧客の行動や感情の整理とマッピング
縦軸と横軸が完成したら、設定したペルソナが各ポイントでどのような行動をし、どんな感情を抱くのかを整理しリストアップしていきます。
行動に関しては可能な限りパターンを挙げた上で、実際に起こり得る内容に絞っていく必要があります。
また、感情に関してはポジティブとネガティブを分けて整理していくと分かりやすいです。
どちらに関しても、担当者一人で考えるのではなく、年齢層やポジションが異なる多方面から意見を集めると具体性が増します。
整理ができたら、カスタマージャーニーマップの各所にマッピングしてください。
3-4.ステップ4:タッチポイントの設定
タッチポイントは各フェーズの現状を洗い出します。
例えば、
- 認知はInstagramのストーリーが多い
- 情報収集は各SNS
- 購入はインターネット通販
- 購入後はX(旧Twitter)
といった形で現状の経路を詳しく分析します。
現状を明確に把握することで、ペルソナに適切なタッチポイントを設定できているのか、現状のアプローチがペルソナに有効なのかを検討する材料になります。
また、単にSNSだとしてもInstagramであれば「ストーリーズ」「投稿」など、具体的な経路まで分析しておくと具体的で効果のある施策の考案が可能です。
3-5.ステップ5:アクションと戦略の策定
ここまで集めた情報を元にしていけば、各フェーズで見えてくる課題が浮き彫りになります。
例えば、ある美容商品でカスタマージャーニーマップを作成した場合、
- 認知・興味:多くのユーザーがフォローしているインフルエンサーに知られていない
- 情報収集:ユーザーが検索するKWやハッシュタグを獲得できていない
- 体験:実際にお試しができる店舗や機会がない
- 評価:アフターサービスが弱く顧客化できていない
など、それぞれで課題が見えてきます。
課題は必ずしも1つに絞る必要はなく、多角的な視点で複数取り上げるケースもあります。
課題を全て洗い出した後は、各フェーズの解決策を考えていきます。
注意すべきは、全ての課題を一気に解決しようとしないこと。
課題の中で優先順位を定め、どこから着手すれば目標の達成に早いのかを検討し、施策を実行してください。
4.企業のマーケティング戦略への組み込み方
カスタマージャーニーマップは、マーケティング戦略を考えるうえで欠かせない指標となります。
具体的にどう組み込んでいけばいいのかも解説していきます。
4-1.カスタマージャーニーマップを活用したコンテンツマーケティング
マーケティング戦略の一つとして、コンテンツの提供・強化は重要な施策になります。
ただし、現状さえも把握せず、自社の商品やサービスに対して適していないコンテンツを量産をしてしまうケースはよくある事例の一つです。
カスタマージャーニーマップがあれば、ユーザーが抱えている課題や悩みが明確になるので、そこに向けたコンテンツをピンポイントで提供することができます。
したがって、コンテンツを考えるベースとしてマップを上手に組み込むと効果の高い施策になるはずです。
さらに精度の高いコンテンツマーケティングとなるように、カスタマージャーニーマップの縦軸に「コンテンツマップ」を組み込んで可視化するのもおすすめ。各フェーズ毎に適切なコンテンツ内容や媒体を検討して可視化すれば、明確な施策を立てられます。
4-2.カスタマージャーニーマップを共有して効果的な営業を施策を検討
カスタマージャーニーマップは、マーケティングやエンジニアだけでなく最前線でセールスをしている営業に共有するのも効果的です。
そもそもこれだけ商品やサービスが溢れている時代となれば、売上目標や数字だけを追う施策はもはや難しいと言えます。
したがって、リアルな顧客目線や思考、課題が見えてくるカスタマージャーニーマップがあれば、効果的かつ即効性のある営業施策の検討が可能です。
ペルソナに設定した顧客の心を動かすためにも、マップで可視化した情報があれば必要な販売チャネルや営業手法を検討・構築できるため、他部門も積極的に巻き込んでいくメリットは高いでしょう。
4-3.キャンペーンやプロモーションの設計
キャンペーンやプロモーションの設計においてカスタマージャーニーマップは欠かせない指標となります。
ただ闇雲にキャンペーンやプロモーションを打つのは、無駄なコストと時間を費やす結果になりがちです。
マップで顧客が抱える課題や悩みを明確に見出し、解決するための施策としてキャンペーンやプロモーションを設計するのが最もスムーズで効果のある内容になります。
また、キャンペーンやプロモーションは顧客を掴む有効なタッチポイントになり得るので、顧客の課題とキャンペーンの目的が一致する内容の設計をしてください。
ちなみに、マップから導き出した答えが必ずしも正解しているとは限りません。
よって、キャンペーンやプロモーションを実施した成果を数字に残して振り返り、再度分析できるようデータ化するのも必須です。
5.カスタマージャーニーマップの実例と成功のポイント
最後はイメージしやすいように、カスタマージャーニーマップの作成によって成功した実例を紹介します。
成功の鍵を握ったポイントにも触れておきます。
5-1.株式会社パモウナの事例
参考:DESIGNα
大手食器棚メーカーの株式会社パモウナは、カスタマージャーニーマップを活用してWebサイトのリニューアルを実施した結果、「カタログ請求数199%アップ」「ページ訪問ユーザー数170%アップ」とCV(コンバージョン)の向上に成功しています。
成功のポイントは、顧客からの声を徹底的に集めるUXリサーチを実施した上で、正しいカスタマージャーニーマップを作成・活用したことです。
ペルソナを設定する前に、
- 購入者や購入前のユーザーへインタビュー
- 売り場の陳列状況やユーザーの行動観察
- 販売員へのヒアリング調査
を実施し、求められているニーズを徹底的に調査しています。
その結果、具体的かつ精度の高いペルソナの作成を実現したことで、カスタマージャーニーマップの再現性を高めた形です。
さらに、浮かび上がった課題をベースに、各フェーズで理想とする状態の設定とどのような解決策が必要かを考える「Tobeカスタマージャーニーマップ」と呼ばれる指標も2段階目として作成しています。
参考:DESIGNα
最終的には、Tobeカスタマージャーニーマップから見えてきたアイデアを実現するための解決策や戦略を設計し、Webサイトに落とし込んだことで高い成果を実現しています。
全てのプロセスにおいて顧客目線を重視し、UXを徹底的に追求したカスタマージャーニーマップの作成例として、ぜひ参考にしてみてください。
5-2.カスタマージャーニーマップ作成時の注意点
カスタマージャーニーマップを正しく作成しなければ、事例のような高い成果を達成するのは正直難しいと思います。
精度の高いカスタマージャーニーマップを作るために、注意すべき点は5つです。
- 「企業の理想」ではなく「顧客視点」で作成する
- 部門や部署を超えて多方面から意見を交える
- ペルソナ設定は「感覚」ではなく「データ」を利用して設定する
- 最初から作り込みすぎない&定期的にブラッシュアップする
- 見えてきた課題に優先順位を設定し確実に施策を実施していく
よくあるケースとしては、作成したマップが時代や状況からズレてしまい、間違った方向性の施策を打ち出してしまう企業もあります。
また、マップを作成したことで満足してしまい、施策の実施が中途半端になり「成果が出ない」「見直し・改善策が見えなくなった」と嘆く企業も数多くみています。
カスタマージャーニーマップは指標の一つでしかなく、ただ作成すれば業績が向上するわけではありません。
マップで導き出した課題や悩みに対する施策を実行し、検証や改善をしていくPDCAサイクルを回していくのが最も大切なポイントです。
6.カスタマージャーニーマップで企業のマーケティングを次のレベルへ
いかがでしたでしょうか?
カスタマージャーニーマップが正しく作成できれば、顧客が抱える課題に対して適切な施策を考えられます。
一昔前であれば、単に品質が良い優れた商品やサービスであれば、宣伝や広告だけで売れてしまう風潮もありました。
しかし、さまざまな商品やサービスが日々生まれる現代では、購入前〜購入後のプロセスの中で、ユーザーにとって不快に感じる体験をしてしまうと別の商品やサービスに流れてしまう時代です。
商品やサービスを売る・成果のある行動をするためにも、マーケティング施策は必須になりますので、担当者が中心となってカスタマージャーニーマップの作成を進めてください。
ただし、今成果のでる施策がないからといって「とりあえずマップを作成すればなんとかなる」といった安易な考えで進めると失敗しがちです。
最初に現場で起きている課題を明確に分析・整理していなければ、カスタマージャーニーマップから良いアイデアや解決策が生まれません。
したがって、目的や現状に合わせて準備をしてから、マップの作成に着手していきましょう。
もし、自社内だけでスムーズに進められそうにない場合は一度、株式会社K.OFFICEにご相談下さい。
弊社では10年以上の広告業界の中で培ったマーケティングのノウハウがあり、100社以上の企業さまのお手伝いをしてきたディレクターが御社の業績向上を目的としたマーケティング施策のお手伝いを致します。
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